小学5年生の男子が入寮してきて色んな事を学びました
令和3年3月5日
児童養護施設の指導員時代に明らかに母親から虐待されていた小学5年生男子が入寮してきた時のケースをお話しします。小学5年生の男子が措置されてくるとの事で事前に情報を見ていて、身長も体重も明らかに少なくて小学1年の子と変わらない数値だったので正直「何かの間違いではないか」と思っていたのですが、本人を前にして「間違いない記録だった。」事を知り、家庭環境によって発育に大きく影響するのだと言う事を先ずは理解しました。(最近のニュースでは明らかに体重が少ないケースの報道がよくありますが。)
最初に会った時の印象は「不安が大きいからか意味の分からない事を良く話しする子で、顔が小さくてサルみたいだ。」と申し訳ないのですが正直な印象でした。それよりも印象深かったのは入寮初日の夕食の場面でした。食事は通常、ご飯 と味噌汁とおかずがあり、基本的にはいわゆる『三角食べ』なのですが、そんな中で彼の食べ方は先ずはご飯茶碗をソロっと持ち、全部ご飯を食べ終わるまでご飯茶碗を口から離さないのです。そしてご飯茶碗が空になるとそのご飯茶碗をソロっと置き、次に味噌汁のお碗をソロっと持ち、これまた全部食べ終わるまで口元から離さなくて、その後のおかずも同じ要領だったので驚いてしまいました。
なぜこのような行動をとる様になったかを私なりに考えてみた結果は、家での食事の時に母親の機嫌が悪い時には、茶碗を置いた時に『ことっ』と音がしただけで「うるさい」と手当たり次第物が飛んできたら嫌だからなるべく音がしないように茶碗を置くタイミングを少なくしていたのではないかと推察しています。(この習慣から通常のように食べるようになるのにほぼ1カ月かかりました。)そして極端な位に多動であり落ち着きがなくて、正直私もイライラする事が度々でした。学習室(地域に開放している児童館の2階)でも落ち着きがなくて他の小学生からも鬱陶しがられていました。
この子が初めての正月帰省で母親が迎えに来る日は朝からいつも以上に落ち着きがなく、みんなと一緒に勉強をしていて、母親が迎えに来たとわかると、飛び上がるように立ち上が慌てて荷物を持って母親の所に行くと米つきバッタのようにぺこぺことしているのを見ていると母親は「もっと早くしなさい。」等々とがみがみ言っているのには唖然とさせられました。もう一つ驚かされたのは中学生になり数学や理科の教科はそこそこ出来るのに漢字は全くと言って良い程に書けないのです。そんな彼でしたが中学校を卒業する頃には同級生と変わらない位の体形で、高校にも進学して小学時代にはがみがみ言っていた母親が高校を卒業した彼の腕につかまる様に歩いているのを街中で見た時には正直安心しました。だってリピーターの皆さん思いませんか、力関係が逆転した時に半沢直樹ではありませんが『倍返し』のような状況になったら悲しいではないですか。倍返しにならなかったのはありがたかったと思っています。

