平成29年度 介護職専門研修会~伴走型介護の中核となる介護職員に求められるものとは~ 報告書
坪井寿夫
開催日:平成29年11月24日(金)
会場:ホテル京阪京橋グランデ7階
- 講演1:伴走型介護が目指す介護の可能性とは
- 講師:東洋大学 ライフデザイン学部 生活支援学科 准教授 高野龍昭 氏
「5つのゼロ」(オムツ・骨折・胃瘻・高速・褥瘡)「4つの自立支援」(認知症・看取り・機能訓練・口腔ケア)は介護の画期的な取り組みだが、これからはこれに加えて「その人らしく生きる」ための介護が必要となってくる。自己実現のための「伴走型介護」。
- 介護保険制度の動向
年々要介護度の認定者は増え続けており2025年度には826万人と推計され、介護給付と保険料も年々増えてきている。将来の人口が減る中で、高齢率は上がるが、生産年齢人口が下がるため、ますます負担が増えてくる。近未来の介護サービスは、①公的サービスの産業化、②インセンティブ改革、③公共サービスのイノベーションがあり、注目するのは、③でいままでとは違うやり方ではなく、全く別の取り組みを図る必要があり、介護ロボットを導入したり、ICTやビックデータを用い、業務の簡素化と標準化、労働生産性の向上が図る必要があり、施設としてはこれらを取り組むことで加算の対象になってくるのではないかと考えられる。
ヘルスケアにおける質の指標として、いままでは「構造・Structure」施設基準や人員配置などのサービスを生み出す構造、「過程・Process」サービス提供手順や苦情処理体制、モニタリングなどといった2つの事が評価されていたが、例えば「外出」や「買い物」などといった生活の質といったものが評価されていなかったものが、これからは「成果・Outcome」実際に受けた影響、利用者が影響を受け変わったことなどが、重要にない、評価の対象となってくる。
2018年度の介護保険制度改正は「ターニングポイント」になり、2018年は「インセンティブ元年」になるのではないか?2018年度施行「保険者機能に応じたインセンティブ」⇒「事業者の機能に応じたインセンティブ」⇒「高齢者自身へのインセンティブ」となってくるのではないかと考えられる。
- 「自立支援」をめぐって
自立の考え方として、「他者や物に頼らず、自分一人で生活ができる」と「助けを借りながら自分自身で生活設計し、主体的な生活を送る」の2通りがある。例でいえば、自分一人の力で1時間かけて服を着替えることと、手伝ってもらい5分で着替えが終わり、残りの時間を好きなことをして過ごすかの違いである。自分のみの力による自立の「自助的自立」と他者に依存して自分の価値観を保つ心が自立の「依存的自立」は、両方とも介護サービスが目指すべきことなのである。ただ、マズローの5段階欲求のように排泄や食事などと言った生理的欲求が満たされていないのに、いきなり誰かに認められたいや自己実現したいなど言った高次な欲求を求めないので、まずは、生理的な欲求を満たされる介助が必要となってくる。
ここで伴走型介護の検証の結果があります。ケアプランをもとに分析で対象はQOL向上及び自己実現を重視した目標を設定しているかたでです。ケアプランの結果としては「心身機能・身体構造」の改善が目標達成の3割ほどなのだが、「活動」「参加」の改善及び目標達成は9割にのぼった。心身機能が改善しなくてもQOLの向上が達成したこととなり、心身機能の改善が困難であってもQOLの向上は可能であることが証明された。
- 「介護の質評価」「インセンティブ付与」をめぐって
いままでは効果があっても無くても報酬がもらえていたが、これからは効果をデータ化して報酬がもらえるようになってくる。「成果に応じた報酬」が注目されている。ただ、評価にあたっても課題が4つある。第1、そのかたの課題はなにか?どこで評価するのか?などは一人一人が違ってくるため統一した設定が難しい。第2、心身の状態が良い時と悪い時があり、いつの時期に評価時点を設定したらいいのか難しい。第3に、特養などといった事業所は事業所の努力なのか分かりやすいが、在宅などは、本人なのか?家族なのか??ヘルパーなのか?などどこの評価になるのかが分かりずらい。第4に、居宅サービスのなかでも、色々サービスを併用している事もあるので、どのサービスに効果があって、どのサービスが効果がなかったのか分かりずらい。
介護の「質」の評価が始まる。多くの政策において「インセンティブ改革」「ワイズ・スペンティング(賢い支出)政策」が拡大し、「介護の質評価」も現実的なものになってくる。「同一サービス=同一報酬」の常識は終わりを迎える。
今後、生活の質が重要視されていく中で、その方がその人らしく生活を送れるためには、何が必要になってくるのかが重要になってきます。ということは、その方のその人らしくはどういうことなのかを知る必要があります。その方の生育歴・学歴・職歴・結婚歴・既往歴といった生活歴を参考にしたその人らしくだけでなく、施設に利用し始めてからのその方の新たな思いを汲み取ることで、その方のその人らしくが知り、願いを実現できる一歩なのだと。
- 講演2:医療と介護の連携における高齢者福祉施設の介護職員に求められるスキル
- 講師:医療法人社団裕和会 理事長 長尾クリニック 院長 長尾和宏 氏
発熱・嘔吐・便秘・下痢といったものは、苦しいがその事が直接な原因で亡くなることはなく、それにともなって窒息や潰瘍を起こすことで亡くなる。また、これらは日常的に起きうることとして介護職員は普段からどのような症状が出て、どのように対応を行ったらいいのかなどをケア会議といった場面で普段からシュミレーションした方がいい。
昔は、在宅で亡くなることが多く、病院で亡くなることが少なかった。ただ、年々変化し、現在では病院で約8割、在宅では約1割と逆転してしまった。病院で亡くなる場合、延命措置をとるがその延命措置の止め時が分からなくなり死ねまで続き、全身管だらけになってしまう事もある。枯れるように亡くなりたい方がいるなかでかなえる事が難しい現状になっている。在宅で看取りを行うには家族とケアマネや看護師・医師との連携が必要なってくるが、近い将来に「遠隔看取り」が出来るようになる。医師がテレビ電話で死亡確認し、看護師に死亡診断書を代筆できるようになるということである。また、離島といった無医離島や無医村に限った事ではなく、都市部でも可能といったことが注目する点である。
講演3:選ばれる事業所となるための介護職員教育に向けた体制作り
- 講師:HOTシステム株式会社 代表取締役 蜂谷英津子 氏
感じの良い方・好感度の高い方は、「マナーが出来て、コミュニケーション能力が高く、ホスピタリティマインドがある人」です。ホスピタリティもコミュニケーションもまなーもそれぞれが大切なことで、ひとつでも欠けていたら心地よいサービスを送ることが出来ない。
ホスピタリティとは意識を持って相手をよく観る「目配り」、相手のメッセージを受け取り相手の為に心を働かせる「心配り」、相手が喜ぶためにどんな方法をすればいいかを考える「気配り」を順番に進めていきます。
- ホスピタリティとは、相手への「思いやり・やさしさ・歓待」」、相手の立場に立った言動のことです。相手を尊重して、相手に愛情を持ち、相手の為に心を配り真心を尽くすことです。
- コミュニケーションとは 離職率の中で「人間関係」が一番の原因となっている。
- 相手の思いを受け止めて、自分の想いを伝えることが大切。言葉だけでなく語調や表情や態度が重要になってきます。「相手にどのように伝えたのか」ではなく、「相手にどのように伝わったか」。
- マナーとは親しき仲にも礼儀あり。親しみとなれなれしさは違う。なれなれしい関係は個人的な関係になってしまい、利用者は特別な対応を期待するし、職員は社会人としてのマナーが薄れてしまう。利用者との心の距離が必要。なれなれしくもなく、冷たくもない心理的距離、利用者と幅のある距離を持つことが必要。
- マナーとは、相手を不快にさせないための言葉遣いや立ち振る舞いとの事。ルールは守らないと罰則があるが、マナーは守らなくても罰則はないので、守らない事がる。すべての日が気持ち良く過ごす為には利用者やその家族以外に一緒に働く職員に対してもマナーが必要。「他者を気遣う心」周りの人と仲良くする事はチームワークを促進せせる。チームワークがいいとミスがあっても協力し合えるので小さなミスですむ。