令和5年度 岐阜県社会福祉施設協議会西濃支部栄養士部会研修会参加報告

令和5年12月9日

令和5年度 岐阜県社会福祉施設協議会西濃支部栄養士部会研修会参加報告

食事・栄養管理係長 若園貴宣

  • 日時:令和5年12月8日(金)13時30分~16時
  • 場所:海津市総合福祉会館ひまわり2階研修室
  • 研修内容①講演 演題「なぜ今栄養が注目されているのか~栄養・口腔の連携強化に向けて~」

講師 朝日大学歯学部教授 谷口裕重 氏

②グループワーク「多職種連携について」

  • 研修報告

①講演

結論を言えば口腔ケアと栄養は非常に密接な関係であるとのことであった。

以前からも言われていることだが、今回の講演を通し、私が新たに学んだこと、知ったこと、重要なことをまとめ研修の報告としたい。

★フレイル(低栄養:体重減)とサルコペニア(筋肉量の低下:転倒)と口腔機能低下(嚥下の不良)と認知症

口腔外来を受診される高齢者の方を主に話が進んだ。卵が先かにわとりが先かという結論がつかない話であるとの気もしたが、上記の4つの概念は相関が強く、予防という観点において口腔機能を維持するということは高齢者の方の生活の質をあげることにおいて必須の事項であるということ。では終の棲家でもある特養の入居者様、認知症の方の口腔機能維持はどうすればいいのか。以下氏からアドバイスをいただけた。

★食事介助のポイント

ある程度食事が自立可能な方はいいとして、やはり私が気になるのは、認知症があり、食事介助が必須の方の対応方法であった。質問もさせていただいたが、氏からのアドバイスで参考になった点を記したい。

「開口不良の方の対策」

当施設でも食前体操を実施しているが、自立でできない方も多い。自力でできない方でも耳下腺のマッサージで唾液分泌を促進

⇒唾液で口腔乾燥を防ぎ、舌を出して左右に引っ張る

⇒嚥下機能低下の方は舌の動きが悪い方も多い。下の動きが悪ければ、食材がうまく咽頭に送られず、誤嚥のリスクも上がってしまう。

可能な方であれば舌を触り、左右に動かすことで舌のリハビリに有効。

 

⇒あごの筋肉のマッサージ

高齢者になると息は吸えるが吐く力は衰えてくる。吐く力は嚥下でも重要でそれにはあごの下の筋肉が深く関わっているとのこと。

嚥下力改善のためにあごの下のマッサージも有効であるとのこと。

 

「円背のある方の食事姿勢」

・円背のある方の食事姿勢は、椅子に深く座りすぎると逆にあごが上がってしまうので、少しお尻が前にずった姿勢が望ましい。

・嚥下するためにも腹圧を作る足の接地は重要。

 

「食事前と食事後の対応」

・食事前

覚醒を促し、食事開始であることの声掛けの重要性

・食事後

誤嚥は食事後すぐに現れない場合も多い。不顕性の誤嚥を見過ごさないように食後の口腔ケア(残渣が残っていないか)、胃からの逆流を防ぐため食後にすぐ臥床させていないかの確認。

 

「交互嚥下の重要性」

咽頭に残った残渣の嚥下には交互嚥下が有効。

・固形物を続けて提供せず、途中途中で液体を提供。

・最後は咽頭に残った残渣を取りきるため、お茶などの液体を提供する。

 

「麻痺側の理解」

脳血管疾患で麻痺がある方の介助は適正か。誤嚥のリスクも高まるので、麻痺が残る側の反対側の口腔に食事が提供できているか確認。

 

また今回の講演では実演ということで氏自らファイバースコープを鼻から咽頭まで入れ飲水や嚥下の様子を見させていただけたことは初めてであり、誤嚥のしくみをあらためて理解する上で、非常に有意義だった。

 

②グループワーク

4~5名に分かれ、テーマ別に議題を設け、話し合いを行った。

私たちのグループは「多職種連携について」ということで、施設により多少の差こそあるが、栄養士のほかにも歯科衛生士、理学療法士などの専門職の採用が施設でも増え始め従来の介護職、看護職、ケアマネをはじめ、実質の多職種連携が徐々に出来つつあるようであった。

「多職種連携」が言葉だけではなく、必然の業務であり、介護サービスを向上する意味でも当然の方針であることは他の施設の話も聞きながら十分に感じ取れた。

では実際にどのように行っているのかという点については、時間をとってじっくり・・・という現状ではなく、仕事の空いた時間や、食事中の巡回時など、互いの時間が取れる時に行う施設がほとんどで、日常の業務に忙殺される現状も、また同じであった。

解決策は、施設のトップがカンファレンスの時間を設けるよう多職種間にトップダウンで指示し、施設全体で取り組む姿勢を見せるべきとの意見も多く、「多職種連携」の充実には管理者の一声が非常に重要だとの認識を強く持った。