認知症介護フォーラム2016福岡会場
認知症介護フォーラム2016
平成28年9月17日
武藤 朝記
今回、認知症介護に関する研修に参加させていただきました。そこで学んだのは、地域包括支援センター等を中心とした、地域でのつながりの重要性です。そして、信頼と尊重、助け合いができる社会の構築です。
- 講演「認知症の理解と支援―“点”から“面”へのケア展開に向けて」
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
自立促進と介護予防研究チーム 研究部長 粟田 主一 氏
初めに簡単な認知症とは何かという話から始まりました。そして、本人や家族がいかにして初期の認知症に気づくことができるかが重要であるとの事でした。本人が何となくひょっとしたら認知症なんじゃないかと思うことがあり、それは本人を不安にさせ、さらにはその様子を見て、周りも不安になるという悪循環があります。
しかし、現在の超高齢化社会においては、ある程度の年齢になれば認知症を患うのは、ごく普通のことであり特別なことではないということ。そしてある程度、認知症の進行を遅らせることも可能であり、そのためにも、初期支援は非常に重要であるということです。そうすることで、本人とその家族の生活の質を保持し、穏やかで安全な生活を継続することができるのです。
そのためにも、地域包括支援センターは非常に重要な役割を担っているのですが、残念ながら現在、あまりうまく機能していないようです。しかし、それら全てを福祉施設で賄うのは不可能です。余りにも範囲が広すぎるのです。しかし、少しずつでも活動していかなければ、日本はますます厳しい環境になってしまいます。そして、現在新たに始まっているのが、「認知症初期集中支援推進事業」です。これには、地域包括支援センターも含まれますが、我々介護に携わる者や、かかりつけ医等が連携し、地域に向けて発信していくことです。以下のディスカッションにそのヒントがありました。
- 社会福祉法人が運営する認知症カフェ
社会福祉法人が実施主体の認知症初期集中支援チームです。新オレンジプランというものがあります。認知症の方が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることが出来るようにする計画のことです。そのプランの中で認知症の介護をする方への支援というものがあります。普段、なかなかそういった話をすることもなければ、話をする場所もないということで、認知症に関する相談や悩みを介護職、認知症サポーター、ボランティア等が聞き、どういった対応をしていけば良いのかを個人的に話をすることができるようになっています。つまり、地域で専門家が地域の方々と共に考えるというものです。カフェというかたちでお茶を飲みながらリラックスして話ができるように配慮されています。今後、こういった形のものが増えていくのではないかと思います。そして、それこそが「地域と共に」という事になるのではないでしょうか。
- 回想法を活用した認知症ケアの取り組み
「回想法」とは、かつて経験したことを思い出す(回想)きっかけを作ることです。思い出すきっかけには、懐かしい品物、懐かしい匂い、聞き覚えのある音、見覚えのある景色、懐かしい味、人の思い出話等です。今回の事例発表では、特養にて懐かしい品物「そろばん」を使って、入居者の方々みんなで楽しそうに昔話をしたり、実際にそろばんを使って計算をしたりといった様子が見られました。なかには100歳になる方が、軽やかな動作でそろばんを弾く様子が印象的でした。そして、それをきっかけに話しがどんどん盛り上がっていくのも見ていてとても印象的でした。つい最近のことは忘れてしまっても、昔のことは覚えているということがよくあります。その思い出を引き出すことで、周りとコミュニケーションをとることができたり、自分自身が楽しくなったりと、効果がみられるようになっています。そして、それが楽しい生活に繋がるのだと実感しました。